東北夢の桜街道

「この路地を抜ければ、30秒。子供の頃は、顔パスで毎日通っていました。」と、伊藤当主が案内してくれた「本宮映画劇場」は、大正生まれの映画館である。当時、公民館のなかった本宮に、人が集う場所を作ろうと、伊藤当主のおじいさんはじめ、地元の名士たちがつくった映画館だ。閉館から50年余りたった今も、劇場内には、カーボン式映写機が健在で、木製の椅子の観客席と大きな銀幕スクリーンを囲む壁いっぱいに、往年の映画スターのポスターが貼られている。映画を観た帰りに、「大天狗」を買って家で飲む。いや、映画を観る前に、一杯飲んでやってきたのかもしれない。祭り、映画、という、暮らしのなかのエンタテイメントを彩ってきたのが、この町では「大天狗」なのである。劇場に予約をすれば、不定期ではあるが、なかを見学できる。